マスコミには「文壇タブー」というのがあって、とりわけ作家などのスキャンダルを書くのは、暗黙のうちにタブーになっていると言われています。

実際に、『週刊文春』や『週刊新潮』などが石原慎太郎氏のスキャンダルを取り上げることはまずありません。石原氏が率いる旧太陽の党と合併した維新の会がもっとも恐れるのは、石原氏のスキャンダルだという声もあるようですが、しかし、『文春』や『新潮』がそれを記事にすることは決してないでしょう。

実際に石原氏に関しては、マイナスになるような記事は皆無と言ってもいいほどです。それどころか、フジテレビなどは、なにかにつけ石原氏にご意見を伺ってはその発言を流し、まるで芸能界のご意見番・和田アキ子と同じような扱いなのです。その結果、カワードな性格の裏返しである強気な発言と相まって、週に2日しか登庁しない不真面目な都知事であったにもかかわらず、あのような「リーダーシップをもった政治家」のイメージが定着したとも言えるのです。これじゃ小心者の常でますます傲岸不遜になるのも当然でしょう。

一方、好きか嫌いかは別にしても、小沢一郎などはあることないこと書かれてほとんどサンドバック状態でした。これほどマスコミの餌食になった政治家もめずらしいのではないでしょうか。小沢を叩けば売れると言われ、”小沢叩き”はエスカレートするばかりでした。これはどう考えてもフェアではありません。

ひと昔前でしたら、週刊誌や新聞などで書けなかった記事が『噂の真相』などに持ち込まれて日の目を見ることがありましたが、そんなタブーをものともしないゲリラジャーナリズムも壊滅してしまった現在、内心忸怩たる思いをしているジャーナリストも多いはずです。そのまんま東ではないですが、「どうせ長くないんだから」と思っているとしたら、それこそ石原氏に失礼というものです。長年「文壇タブー」で庇護されてきた石原氏は、スキャンダルの宝庫かもしれません。タブーに挑戦する勇気あるメディアはいないのかと言いたいですね。
2012.12.23 Sun l 本・文芸 l top ▲