もう少し大風呂敷を広げた話をー。

橋下発言について、元外交官の方が、21世紀の今日、民主主義や人道主義や平和主義や国際協調主義が世界の共通語であって、それを前提にしない限り、国際的にはとても受け入れられないと言ってました。たしかに、人権なんてなきに等しい独裁国家の憲法だって、一応民主主義や人道主義や平和主義や国際協調主義の理念を謳っているのが普通です。たとえ「建前」であっても、それが幾多の悲惨な歴史を経て人類が到達した、国際的には誰しも否定できない理念だからです。もちろん、その理念とはほど遠い現実があることもたしかで、だからそれをどう実現していくかが私たちに与えられた課題なのです。

橋下発言に代表されるような歴史修正主義的なトンデモ史観は、常識的に考えても、とても世界に受け入れられるものではないのです。橋下発言に対して、ネットでは圧倒的に擁護する意見が多く、ある意味では橋下発言はネットから生まれたとも言えますが、それは国際的に見れば”カルトの妄想”に近いものです。実際に「カルト」ということばを使って報道している外国メディアもあると聞きました。

日本だけがどうして非難されなければならないのか。日本はいつも貶められている。日本の誇りを取り戻そう。そうやって「法難」を煽るやり方は、かつてのオウムにも見られましたが、カルト宗教の常套手段です。それが「カルト化する日本」と呼ぶゆえんです。

最近、「すごい日本人」「リスペクトされる日本」などと日本(人)を自画自賛するテレビ番組がやたら目に付きますが、それも同じ流れのなかにあるのでしょう。

しかし、世界に誇るクールジャパンにしても、(私も以前書きましたが)実際は日本国内で言われるほど受け入れられているわけではないのです。『紙の爆弾』(6月号)という雑誌の「クールジャパンはなぜ幻に終わったのか」という業界人の匿名座談会が、そのあたりの事情をあきらかにしていました。

それによれば、80年代から90年代に、たしかに日本のコンテンツの黄金時代があったそうですが、この20年、日本のゲーム輸出は、6千億円でほぼ横ばいだとか。一方、世界市場は5倍になっているので、相対的にシェアは下がっているのだそうです。

―― アニメや漫画は、どうなのでしょう。フランスの「ジャパンエキスポ」で二〇万人以上が集まったと騒いでいますが。
(引用者注:アニメ編集プロダクションスタッフ) ネットが普及したおかげで日本のアニメファンが交流しやすくなった。それで小さな町で孤立していた「オタク」たちが表に出てきただけですよ。別に増えているわけではない。秋葉原にガイジンさんが増えているのは「ヘンタイ」系のグッズが豊富で、この手の児童ポルノスレスレのグッズは日本でしか手に入らないからです。


中国も経済的に行き詰ってきたと日本ではさかんに言われていますが、実際はアジア、とりわけ東アジアにおいて中国の存在感は政治的にも経済的にも増すばかりなのです。いづれアジアの覇権が、中国とロシアが主導する上海協力機構に移っていくだろうと言われていますが、そうなったとき、日本はどうなるのか。私には、「孤立」「没落」という文字しか思い浮かびません。

今や、中国や韓国はシェア争いをするライバルなのです。ライバルと競争するには、相手を正しく知り分析して戦略を立てなければ、勝ち目がないのは言うまでもありません。今のように、トンデモ史観で「自演乙」するだけでは、最初から勝負を下りているようなものです。

橋下発言は、こんな自閉的な「カルト化する日本」から出るべくして出てきた発言だと言えます。そして、橋下発言を擁護した東浩紀のトンチンカンぶりを見てもわかるように、いわゆる現代思想も完全に破産しているのです。時代を語る知もなく、世界の共通語さえも共有することができない今のこの状況こそ、日沈む国の深刻な現実を物語っているように思えてならないのです。

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2013.05.30 Thu l 社会・メディア l top ▲