最近また身体の調子がよくないのですが、昨夜も午前2時すぎに身体の変調で目を覚ましました。そして、気を紛らすために、パソコンを立ちあげたら、このブログのアクセス数が、アベノミクスの株価のように異常な勢いで伸びていました。
アクセス解析で調べたら、今年の1月にアップした記事・『狂人失格』にアクセスが集中していたことがわかりました。言うまでもなく、これは、昨夜、ヤフーニュースに掲載された「中村うさぎさんらに賠償命令 小説モデルの訴え認める」(朝日新聞デジタル)という記事の余波によるものです。
幸か不幸か、私の記事が「狂人失格」あるいは「優花ひらり」というキーワードで上位に表示されていたため、判決の記事に興味をもった人たちが検索してアクセスしてきたのでしょう。新聞各紙も朝刊でこのニュースを伝えていますので、今日もアクセスはつづいています。
それにしても、モデルの女性が本当に中村うさぎを訴えていたとは、正直驚きました。たしかに、そういった話はありましたが、ブラフ(はったり)だろうと思っていたからです。
もっとも作家というのは、前も書きましたが、訴えられて当然のような存在なのです。太宰治ではないですが、”人非人”なんだからそれは仕方ないと思います。モデルを特定されれば、誰だって訴えられる可能性があります。
ただ、細かいことを言えば、モデルが特定されたことに関して、中村うさぎのほうに多くの非があるかのような認定には、ちょっと首をひねらざるをえませんでした。
『狂人日記』が発売されたとき、モデルの女性のブログには、書店の棚に並べられている『狂人失格』の写真とともに、つぎのような記述がありました。
なんのことはない、本人が小説の主人公は自分だと「宣伝」しているのです(別の日には、中村うさぎの「狂人失格発売記念トークショー」の告知も貼られていました)。そのため、検索エンジンで「狂人失格」「優花ひらり」と検索すれば、彼女のブログがトップページに表示されるようになったのです。私もそうやって彼女のブログを知りました。
私はブログを仔細にチェックしたわけではないので確認していませんが、もしかしたらその前に、女性が中村うさぎとのやりとりをブログで公表していた可能性もあります。いづれにしても、「狂人日記」の発行部数はわずか5千部(少ない!)だそうですから、もし自分で「宣伝」しなければ、これほど拡散することはなかったかもしれません。判決でも一応原告の「宣伝」を認定しており、それを勘案して慰謝料を100万円に減額したと言うのですが、それでも中村うさぎの代理人の弁護士は、判決に対して、「雑な事実認定」と批判していました。
それに、コメント欄での誹謗中傷や罵詈雑言は、「狂人失格」のずっと前からくり広げられており、とてもじゃないけど『狂人失格』の比ではありません。しかも、個人情報を晒された上に、注文していない商品が自宅に届いたり、ご主人の勤務先に凸電したりする行為にまでエスカレートしていったという話まであります。コメントを書き込む人間たちもまた「普通ではない」のです。それでも女性はコメント欄を閉じることはなく、コメントを「承認」しつづけたのです。だから、そんな彼女に中村うさぎも興味をもったのでした。
ネット以前には発言の場を与えられなかった人たちが、ネットというツールを得て、発言をはじめたのが今の「ネットの時代」です。梅田望夫氏は、『ウェブ進化論』で、それを「総表現社会」と呼んで称賛しましたが、現実はそんな能天気なものではないことくらい私たちでも知っています。ネットには、リアル社会(私たちの日常)の尺度では測れない現実が存在していることもたしかなのです。
どういういきさつであれモデルが特定されたのは事実ですから、名誉毀損は名誉毀損で、それは仕方ないと思います。ただその一方で、私は、今回の判決に対して、ネットの”特異性”を従来の(市民的価値に基づく)倫理観で裁くことの矛盾を感じてなりませんでした。事実は小説より奇なりと言いますが、ネットは小説より奇なりなのです。
>> 『狂人失格』
アクセス解析で調べたら、今年の1月にアップした記事・『狂人失格』にアクセスが集中していたことがわかりました。言うまでもなく、これは、昨夜、ヤフーニュースに掲載された「中村うさぎさんらに賠償命令 小説モデルの訴え認める」(朝日新聞デジタル)という記事の余波によるものです。
幸か不幸か、私の記事が「狂人失格」あるいは「優花ひらり」というキーワードで上位に表示されていたため、判決の記事に興味をもった人たちが検索してアクセスしてきたのでしょう。新聞各紙も朝刊でこのニュースを伝えていますので、今日もアクセスはつづいています。
それにしても、モデルの女性が本当に中村うさぎを訴えていたとは、正直驚きました。たしかに、そういった話はありましたが、ブラフ(はったり)だろうと思っていたからです。
もっとも作家というのは、前も書きましたが、訴えられて当然のような存在なのです。太宰治ではないですが、”人非人”なんだからそれは仕方ないと思います。モデルを特定されれば、誰だって訴えられる可能性があります。
ただ、細かいことを言えば、モデルが特定されたことに関して、中村うさぎのほうに多くの非があるかのような認定には、ちょっと首をひねらざるをえませんでした。
『狂人日記』が発売されたとき、モデルの女性のブログには、書店の棚に並べられている『狂人失格』の写真とともに、つぎのような記述がありました。
中村うさぎさん、あまり本人不在のところでの、
誹謗中傷はやめてくださいね!!
それでは、優花ひらりこと渚 水帆は密かに
この本のヒットを願っています!!
なんのことはない、本人が小説の主人公は自分だと「宣伝」しているのです(別の日には、中村うさぎの「狂人失格発売記念トークショー」の告知も貼られていました)。そのため、検索エンジンで「狂人失格」「優花ひらり」と検索すれば、彼女のブログがトップページに表示されるようになったのです。私もそうやって彼女のブログを知りました。
私はブログを仔細にチェックしたわけではないので確認していませんが、もしかしたらその前に、女性が中村うさぎとのやりとりをブログで公表していた可能性もあります。いづれにしても、「狂人日記」の発行部数はわずか5千部(少ない!)だそうですから、もし自分で「宣伝」しなければ、これほど拡散することはなかったかもしれません。判決でも一応原告の「宣伝」を認定しており、それを勘案して慰謝料を100万円に減額したと言うのですが、それでも中村うさぎの代理人の弁護士は、判決に対して、「雑な事実認定」と批判していました。
それに、コメント欄での誹謗中傷や罵詈雑言は、「狂人失格」のずっと前からくり広げられており、とてもじゃないけど『狂人失格』の比ではありません。しかも、個人情報を晒された上に、注文していない商品が自宅に届いたり、ご主人の勤務先に凸電したりする行為にまでエスカレートしていったという話まであります。コメントを書き込む人間たちもまた「普通ではない」のです。それでも女性はコメント欄を閉じることはなく、コメントを「承認」しつづけたのです。だから、そんな彼女に中村うさぎも興味をもったのでした。
ネット以前には発言の場を与えられなかった人たちが、ネットというツールを得て、発言をはじめたのが今の「ネットの時代」です。梅田望夫氏は、『ウェブ進化論』で、それを「総表現社会」と呼んで称賛しましたが、現実はそんな能天気なものではないことくらい私たちでも知っています。ネットには、リアル社会(私たちの日常)の尺度では測れない現実が存在していることもたしかなのです。
どういういきさつであれモデルが特定されたのは事実ですから、名誉毀損は名誉毀損で、それは仕方ないと思います。ただその一方で、私は、今回の判決に対して、ネットの”特異性”を従来の(市民的価値に基づく)倫理観で裁くことの矛盾を感じてなりませんでした。事実は小説より奇なりと言いますが、ネットは小説より奇なりなのです。
>> 『狂人失格』