先日、新聞各紙につぎのような記事が出ていました。

週刊文春:上原多香子さんの記事 名誉毀損で賠償命令
 
 週刊文春の記事で暴力団関係者と交際しているかのように書かれ、名誉毀損されたとして、「SPEED」のメンバー上原多香子さんが発行元の文芸春秋側に計3000円の損害賠償などを求めた訴訟の判決で、東京地裁は24日、110万円の支払いを命じた。
 問題となったのは、2011年9月15日号の「暴力団排除条例に狙われる『黒い芸能人』」とする記事の見出しと中づり広告。上原さんが、暴力団関係者が訪れる東京・西麻布の飲食店に出入りしている、という内容。
 畠山稔裁判長は「上原さんはテレビでこの飲食店を紹介した際に一度訪れただけで、暴力団と関わりがあるとはいえない」と指摘。(共同)
(毎日新聞 2013年07月24日 18時21分)


高級ラウンジ「西麻布迎賓館」のオーナーは、いわゆる闇社会とつながりが深いと言われる一方で、芸能界にも幅広い人脈をもっていた不動産会社社長(のちに競売妨害で逮捕・有罪判決)でした。それで、『週刊文春』が、日本テレビの「ヒルナンデス」で「西麻布迎賓館」をレポートした上原多香子をとりあげ、普段から「西麻布迎賓館」に出入りしていて、あたかも暴力団関係者と付き合いがあり、東京都でも施行された暴力団排除条例に抵触しているかのような記事を書いたのでした。

『文春』の記事に対しては、アクセスジャーナルの山岡俊介氏も、当初からなんの根拠もないただの憶測記事(人身攻撃)だと批判していました。たしかに、とかく噂のあった「西麻布迎賓館」を紹介するコーナーを企画した日本テレビがやり玉にあがるのならわかりますが、どうして日テレではなく上原多香子だったのかという疑問は残ります。

問題は『文春』だけではありません。こういった記事が出ると、それがJ-CASTニュースのようなミドルメディアに思わせぶりに紹介され、さらにネットのまとめサイトなどに転載、拡散されるのが常です。そして、「ネットこそ真実」と信じて疑わないネット住人がブログや掲示板などにコピペすることで、ターゲットにされた人間の負のイメージがネットでひとり歩きをはじめるのです。しかも、いったんネットにアップされると、Google でいつでも検索可能になり、永遠にネットで晒されることになるのです。

これがマスコミとネットの共犯によって生み出される”私刑”の構図です。現在はなんでも関東連合と関係があるかのように書く”関東連合ネタ”が盛んです。

オヤジ週刊誌が生み出すネットネタというのはお笑いでしかなく、なによりネット言論なるもののお粗末さを象徴していると思いますが、しかし、そこには笑って済まされない問題が存在していることもたしかです。

もっとも、『文春』にしても所詮は、団塊の世代とともに消えていくメディアにすぎません。こういうメディアは一日もはやく消えてもらうのが「世のため人のため」かもしれません。『文春』が消えたら、林真理子や小林信彦や伊集院静や中村うさぎやミドルメディアの編集者やまとめサイトの管理人や2ちゃんねるの住人は困るかもしれませんが、私たちはちっとも困らないのです。

それに忘れてはならないのは、『文春』は上原多香子や安藤美姫のスキャンダルはこれ見よがしに(でっち上げてでも)書くけど、林真理子や小林信彦や伊集院静や中村うさぎのスキャンダルや、「横田めぐみさんは誰か偉い人のお妾にされているに違いない」と放言した石原慎太郎氏の「お妾」スキャンダルを書くことは絶対にない、ということです。

いつもの『週刊文春』なら、石原発言に対して、<石原慎太郎「横田めぐみさん」「お妾」発言の裏でささやかれる 「銀座ホステス」「劇団女優」を「お妾」の過去>(やや週刊新潮風ですが)なんていうスカートの裾をめくるような記事が出てもおかしくないのですが、絶対に出ることはないのです。
2013.07.26 Fri l 芸能・スポーツ l top ▲