

上の画像はネットから拾ってきたのですが、いづれもステーキ店やコンビニのアルバイト店員がネットに投稿した「悪ふざけ画像」です。
私はこのニュースをみたとき、中川淳一郎氏が『ネットのバカ』(新潮新書)に書いていたエピソードを思い出しました。それは、前ローマ法王・ベネディクト16世がTwitterをはじめたとき、「日本人がつぎつぎ突撃した」恥ずかしい書き込みです。
「ちょwwwww お前毎日白い服だな wwwwwwwwwwwwwwwwwww この貧乏人が」
「フォロバしないとサリン撒くぞ」
「えっちしよ」
オバマ氏と同様のバカ騒ぎのほか、「ローマ法王に殺害予告します。明日殺す」と書く者まで現れた。そして、ベネディクト16世が高齢を理由に退位を発表した時は「老人ホームへ連れてけ!」と書く人が出たほか実に非礼な発言が続出した。
中川氏が言うように、「世の中には我々の想像を越えるバカもいる」のです。「悪ふざけ画像」もその類でしょう。
ネットの一部には、「悪ふざけ」は安くこき使われている非正規雇用の反乱だなどと擁護する声もあるようですが、まさかそんな高尚な話ではないでしょう。どこにでも「バカ」はいるけど、社会的訓練を受けてないフリーターに特に多いだけのことでしょう。
被害にあったステーキ店は、店を閉鎖することを決定。併せて「悪ふざけ」の元アルバイト店員に損害賠償を求めるそうですが、そうやってリアル社会のオキテを突きつけないと、ことの重大さがわからないのかもしれません。なにより必要なのは、彼らをネットから現実に引きずり出すことなのです。
これが誰でもネットをする時代、梅田望夫氏が言う「総表現社会」の現実です。ネット以前は彼らのような人間は発言の場がありませんでした。その意味では、誰でも発言の場を与えられる(発言の手段を得る)「総表現社会」は、民主主義の理想の姿と言えるのかもしれません。Google もそんなイデオロギーをふりまいています。
しかし、ホントにそうなのか。少なくとも彼らにとっては、これが自分を表現することなのです。こういうかたちでしか自分を表現できないのです。以前、東浩紀が、「世間知らずでバカが多い中高生がニコ生で幅を利かせている」とツイートしていましたが、「総表現社会」は、中高生に限らずそんな勘違いをますます増幅させているとも言えます。
先日、大学生の60%以上がヘイトスピーチの存在すら知らなかったという調査がありましたが、私はそれを別の観点で解釈したいと思いました。ネットだけを見ていると、世の中はヘイトスピーチで大騒ぎ、嫌中嫌韓が日本の主流みたいな印象がありますが、それはネットがそういった偏った書き込みで溢れているからにすぎません。嫌中嫌韓が主流でもなければ、媚中媚韓が主流でもないのです。
60%の大学生が知らなかったというのは、ヘイトスピーチの現実を考えればたしかに問題かもしれません。ただ、ネットとの付き合い方という点では、むしろ”健全”と言えなくもないのです。「ネットがすべて」「ネットこそ真実」が異常なのです。
最近、電車に乗っていると、スマートフォンをいじっているかうたた寝(タヌキ寝入り?)をしている人ばかりで、本を読んでいる人なんてホントにめずらしくなりました。逆に、本を読んでいる人が新鮮に見えるほどです。ネットによって、今まで見えていたものが見えなくなったということはあるのではないでしょうか。
前も書きましたが。面と向かって言えないことをネットだと言えるような世界はウソです。ネット住人たちは、そのウソを「本音」「真実」と思い込んでいるだけです。中川氏が書いているように、「人間は完全に考えが合うものではない。一部の発言をもってして全人格を否定し、その人を拒否するのは実にもったいない」し、不幸なことです。
また、”Jカス”ことJ-CASTニュースなどミドルメディアが、”ネットの声”をやたら強調し炎上を煽っているのは、あまりにも心根が卑しく性質(たち)が悪いとしか言いようがありません。その裏には、ニコ動などと同じように、ネットを金の成る木としてしか見てない思惑と計算がはたらいていることを忘れてはならないでしょう。