西野カナの新曲「さよなら」の「10年後も逢えるよ」というサビの部分を聴いているうちに、「おれたちにとって10年後ってただのじいさんとばあさんじゃないか。そんなヨボヨボな姿で逢ってどうするんだ?」なんて思ったりして暗い気分になりました。へたすればあの世で逢うことにもなりかねません。私たちにとって「10年後」はもう”未来”なんかではないのです。
外国人パブだかに入れ込んでいた知り合いと久しぶりに会ったら、最近はまったく足が遠のいていると言うのです。
「どうして?」
「頭だよ」
「頭? 病気かなにか?」
「違うよ。髪の毛だよ」
「髪の毛?」
「見てわからないか? 頭頂部がハゲてきたんだよ。そんな頭では行く気がしない。行ってもしようがないよ」
見るとそんなにハゲているようにも見えないのですが、本人は非常に気にしている様子です。そう言えば、以前、ネットで買った増毛クリームを塗ったら、逆に髪の毛が抜けたとか言って大騒ぎしていたことがありました。
それで、今では釣りや散歩が趣味になったそうです。それはそれでよかったんじゃないかと思いますが、一方で、ここにも老いが忍び寄ってるのかと思いました。
先日観た「ヨコハマ物語」という映画では、金妻(「金曜日の妻たち」)で人妻と恋に落ちた奥田瑛二が、定年退職した65歳の男性を演じていました。当時、私にも鶏冠(トサカ)のような前髪をした「跳んでる」人妻の知り合いがいましたので、65歳の孤独な老人を演じる奥田瑛二を見たときは少なからぬショックを受けました。余談ですが、あの頃、男性はみんな、髪はテクノカットで、ノーベントのダブダブのスーツを着て、セカンドバッグを小脇に抱えていたものです。一方、女性は、アメフトの選手のような肩パットが入った、やたら金のボタンが付いたスーツを着ていて、金のボタンが怒り肩の部分にまで付いていたことを覚えています。
と実は先日、そんな80年代の知り合いを偶然街で見かけたのでした。当時彼女は、”ネコ科の女”なんて言われて、熱をあげる男もいるくらい「燃えろいい女」(世良正則とツイスト)を地で行ってました。
都心のとある舗道を歩いていると、ビルの脇で煙草を吸っているグループがいました。ふと目をやると、そのなかにどこか見たことのあるような女性が煙草を咥えて立っていたのです。まさかと思いましたが、間違いなくそれは”ネコ科の女”の彼女でした。そして、そのとき、私は初めて彼女が転職した輸入雑貨の会社がここだったことを思い出したのでした。
見ると昔の面影は残っているものの、すっかり貫禄ある女性に変貌していました。長い黒髪は茶髪の短髪に変わり、かつての子猫のような小顔も煙草屋の店頭で居眠りするお××ちゃん猫のような貫禄ある顔になっていました。米米クラブの「浪漫飛行」の軽快なメロディをバックに、あの鶏冠のような前髪で跳ねるように街を闊歩していた“ネコ科の女”はどこに行ったんだという感じでした。
彼女は私のことに気付いてないようなので、私はとっさに顔を車道のほうに向けその場を通りすぎました。私とて彼女に勝るとも劣らぬくらい変貌しているので、彼女に声をかける勇気がなかったのです。
現実はこんなものです。「10年後も逢えるよ」なんて言わないほうがお互い身のためでしょう。
外国人パブだかに入れ込んでいた知り合いと久しぶりに会ったら、最近はまったく足が遠のいていると言うのです。
「どうして?」
「頭だよ」
「頭? 病気かなにか?」
「違うよ。髪の毛だよ」
「髪の毛?」
「見てわからないか? 頭頂部がハゲてきたんだよ。そんな頭では行く気がしない。行ってもしようがないよ」
見るとそんなにハゲているようにも見えないのですが、本人は非常に気にしている様子です。そう言えば、以前、ネットで買った増毛クリームを塗ったら、逆に髪の毛が抜けたとか言って大騒ぎしていたことがありました。
それで、今では釣りや散歩が趣味になったそうです。それはそれでよかったんじゃないかと思いますが、一方で、ここにも老いが忍び寄ってるのかと思いました。
先日観た「ヨコハマ物語」という映画では、金妻(「金曜日の妻たち」)で人妻と恋に落ちた奥田瑛二が、定年退職した65歳の男性を演じていました。当時、私にも鶏冠(トサカ)のような前髪をした「跳んでる」人妻の知り合いがいましたので、65歳の孤独な老人を演じる奥田瑛二を見たときは少なからぬショックを受けました。余談ですが、あの頃、男性はみんな、髪はテクノカットで、ノーベントのダブダブのスーツを着て、セカンドバッグを小脇に抱えていたものです。一方、女性は、アメフトの選手のような肩パットが入った、やたら金のボタンが付いたスーツを着ていて、金のボタンが怒り肩の部分にまで付いていたことを覚えています。
と実は先日、そんな80年代の知り合いを偶然街で見かけたのでした。当時彼女は、”ネコ科の女”なんて言われて、熱をあげる男もいるくらい「燃えろいい女」(世良正則とツイスト)を地で行ってました。
都心のとある舗道を歩いていると、ビルの脇で煙草を吸っているグループがいました。ふと目をやると、そのなかにどこか見たことのあるような女性が煙草を咥えて立っていたのです。まさかと思いましたが、間違いなくそれは”ネコ科の女”の彼女でした。そして、そのとき、私は初めて彼女が転職した輸入雑貨の会社がここだったことを思い出したのでした。
見ると昔の面影は残っているものの、すっかり貫禄ある女性に変貌していました。長い黒髪は茶髪の短髪に変わり、かつての子猫のような小顔も煙草屋の店頭で居眠りするお××ちゃん猫のような貫禄ある顔になっていました。米米クラブの「浪漫飛行」の軽快なメロディをバックに、あの鶏冠のような前髪で跳ねるように街を闊歩していた“ネコ科の女”はどこに行ったんだという感じでした。
彼女は私のことに気付いてないようなので、私はとっさに顔を車道のほうに向けその場を通りすぎました。私とて彼女に勝るとも劣らぬくらい変貌しているので、彼女に声をかける勇気がなかったのです。
現実はこんなものです。「10年後も逢えるよ」なんて言わないほうがお互い身のためでしょう。